映画のかなたに
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ジョゼと虎と魚たち(2003年・日本)
  監督:犬童一心 出演:妻夫木聡 池脇千鶴 上野樹里


妻夫木聡がこんなに危険な男だったとは…。なんだかしみじみと、そんなことを考えてしまった。

妻夫木君といえば、子どものように屈託がなく、打算のひとかけらもなさそうな笑顔が魅力。その邪気のなさが私は苦手だったのだが、そういうなよっちい笑顔をしているくせにキスがうまいとは、そんなのアリか?どんな女たらしよりも暴力男よりも、女にとってこういう男の方が危険である。

ジョゼと虎と魚たち1そんな彼が、足の悪い孤独なジョゼに好意を寄せる。その優しさも、優しさから生じるズルさも、男にはありがちな種類のものではあるが、彼の場合はそれが本当に嫌味がなくてねえ。それが同情であれ愛情であれ、あの笑顔の前では「そんなことはどうでもいいわ」という気になる。残酷だ。でもそれが救いだ。


とにかく、あまりに妻夫木君が適役なんで、おねーさんはまいったまいった。案外いい役者かも。


おばあちゃんと2人でひっそりと暮らし、ほとんど家から出ないジョゼが、時々物みたいに乳母車に乗せられて外に出る。体を小さく丸めているにせよ、大人がどうやってあれに乗れるのか。そのギャップにどうしてもギョッとしてしまう私。見てはいけないものを見てしまった感じ。

気になるのは、服装や部屋がこぎれいになっても、ジョゼの髪がいつまでも微妙にボサボサなことだ。見るからにクシを入れていない髪。もしかしたら、あんまり洗っていないんじゃないか。


しかしきっと、彼女はわざとそうしているんだと思う。私にはそうとしか思えない。たとえ足が悪かろうが、若い女の子が好きな人に会う時にも髪をボサボサにしているなんて、普通では考えられないもの。だとすると、あれは心のささくれの表れだろうか。それとも、ああいう髪型をすることで自分を守っているのだろうか。声にならないSOSだろうか。

ジョゼと虎と魚たち2私はあのボサボサしたジョゼの髪に、彼女の心の傷や孤独や痛みを感じる。人を寄せつけない鎧と、誰かに助けを求めている信号。そういった心の葛藤を、あの微妙に乱れた髪に垣間見るような気がする。


人はなぜ、一度でもいいから海が見たいと思うのだろう。


ラブホテルでジョゼは、壁に投影された魚を見る。そこは深い海の底。それまで彼女がいた世界。水の中を泳ぐ魚を見たことがないジョゼ。おそらく彼女は、このまま生きた魚を一度も見ないで終るだろう。だからホテルの部屋で見た魚は、彼女にとってウソでも本物。本物よりも美しい魚。


そう思うと、最後にジョゼが1人で魚を焼きながら、じっとその魚を見つめているシーンは深いなあ。哀しいシーンでもあるんだけど、この時のジョゼが私はとても好きだ。


それはそうと、いくら生まれて初めてナマで見たからといって、檻に入った虎がそんなに怖いか?納得いかん。「この子は壊れ物ですけん」というセリフをさらりと、そして凄みを持って口にできるおばあちゃん役の新屋英子がよかった。

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テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

「麻雀放浪記」(1984年・日本)
  監督:和田誠 出演:真田広之 鹿賀丈史 加賀まりこ


懐かしい。懐かしいけど、今回見直してみるまで、内容をほとんど覚えていなかった。

記憶にあったのは、これが和田誠の監督デビュー作。白黒映画。飛んだり蹴ったり回ったりしない真田広之を、これで初めて見た。「真田広之も、やれば演技ができるんだ」と思った。なので、この映画が、当時アクション俳優としてアイドルだった真田広之が、演技派の第一歩を踏み出した記念すべき作品であること。

つまり、真田広之関係の情報しか、覚えていない。それも果たして、正しい情報なのかどうか。で、肝心の内容といえば、男たちが麻雀をしていることだけ。大竹しのぶや鹿賀丈史や加賀まりこが出ていたことなど、きれいさっぱり忘却の彼方である。

麻雀放浪記1興味なかったのかなあ。なかったんだろうなあ。だって、バクチ打ちの話だもんなあ。私も18歳だったもんなあ。

和田誠はご存知の通り、イラストレーターでかなりの映画ファン。この作品に続き、小泉今日子とまた真田広之で「怪盗ルビイ」を、その後また真田広之で「怖がる人々」を、そしてまたまた真田広之で「真夜中まで」を監督した(他にもあるようだけど、主な作品はこれくらい)。

映画が好きで好きで、真田広之も大好きな和田誠。あと1本くらい、真田広之で撮りそうである。

でも私は、この映画を改めて見直してみて、つくづく思った。和田誠は、子供の頃から映画をいっぱい見ていて映画に詳しく、映画をこよなく愛している。そんな彼が映画を撮ると、センスもキャスティングも悪くないのに、なんでこんなにつまんなくなるんだろう。

まず、お行儀がよい。そして、映画への愛情があふれすぎ。それでも、マイク・ミズノ(水野晴郎)やタランティーノの方向に行けば、まだ面白いのだが、愛情表現がストレートなのだ。うっとおしい。

21世紀に作られた昭和映画を見ればわかるように、たとえ懐かしさは再現できても、時代の空気を再現するのは難しい。時代劇ならともかく、違和感がバレるし、だいたい人間の顔も、変わってきているんだからさ。「69」で、妻夫木聡と安藤政信のすっきり平成顔が、臨場感をぶち壊していたのを見よ。

麻雀放浪記2でもいいんだ。それで。しかたがないから。

でも和田誠は、80年代に戦後のドヤ街を本気で蘇らせようとしている。私にはそう見える。だから、わざわざ白黒映画にしたんでしょう。でも、自分の女を賭けたり、麻雀打ってる最中にボックリ死んだり、女衒が出てきたりしても、何だかきれいなのよ。「あしたのジョー」のドヤ街みたいな、泪橋を逆さに渡れ(だっけ?)みたいな、泥水の中でうごめくエネルギーが感じられないのよ。

よく知らないけど、和田誠って、育ちのよい優等生タイプ?映画監督には、あんまり向いていないんじゃないかなあ。よけいなお世話だけど、よき鑑賞者でいてくれるだけで、十分です。

とはいえ、女衒の加藤健一は、かっこよかったのう。最初、トータス松本かと思ったけど。名古屋章も、あやし~。そして加賀まりこが、真田広之を「坊や」と呼ぶのがサマになりすぎで、そうか、和田誠は加賀まりこで映画を撮りたかっただけなのかもという気もした。

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台風クラブ(1985年・日本)
監督:相米慎二 出演:工藤夕貴 三浦友和 大西結花


教室の窓から顔を出し、生暖かくなってきた風に吹かれて、工藤夕貴がつぶやく。台風来たらいいのにな。

そして台風はやってきた。どしゃぶりの雨が降り、風が狂ったように吹き荒れる。その嵐の夜に、たまたま校舎に閉じ込められてしまった数人の中学生たち。先生に電話をして助けを呼んでも、酔っ払っていて話にならず、結局そのまま学校に泊まるハメになる。

台風クラブ1「台風」と「夜の学校」という組み合わせは、彼らにとって二重の非日常だ。その異常なシチュエーションが引き金となり、日頃からたまっていた鬱積が爆発してしまう。一度爆発したらそれは笑いと同じで、もう止まらない。

だって、中3だもん。中3の夏なんだもん。

この映画が公開されるにあたり、中学生の喫煙、レズビアン、暴行未遂、自殺、そして教師の私生活(恋愛問題)が「いかがなものか」といわれて、ロケ地になった学校での上映会が中止になったという。うーん。どれも今なら特にタブーにならないかもしれないが、それでも、当然のようにスパスパやっているのが普通の女子中学生というのには、私もちょっと面食らった。

タバコはともかく、なんだか女子がみんな大人っぽい。何かをあきらめている感じが。それでいて、何かをまだ信じているところが。

台風クラブ2
暴行未遂シーンは、ここだけ急にホラーだ。なんでだよ~。怖いよ~。相米監督は演技指導が大変厳しいらしいが、大西結花、よくがんばった!

でも一番衝撃的なのは、豪雨の中で、男子と女子が下着姿になって乱痴気騒ぎをするシーンである。しかも、彼らが踊り狂いながら大声で歌っているのが、わらべの「もしも明日が」。これも、ある意味で衝撃。こんな風に使われると、なんだかすごい名曲のように思えてしまうから不思議だ。

真夜中の校庭で大雨に打たれながら、壊れたように踊って歌い続ける彼らの白い下着姿が、まぶしい。

それにしても、ことあるごとによく踊るなあ。この女子たちは。

冒頭いきなり、夜のプールでバービーボーイズですよ。足を振り上げお尻をつきあわせて、今この時をせつな的に謳歌。たぶん本人たちは何も考えていないのだろうけど、大人の私から見ると、ギリギリのところで狂喜乱舞しているように思えて、楽しそうで苦しそう。そこがまたよい。

そうやって、時折見せる狂気じみた雰囲気にドキドキし、シュールな映像と展開にクラクラしているうちに、台風は過ぎ去り、家出していた工藤夕貴は戻ってくる。

台風クラブ3
水浸しになった校庭は、透き通った日差しを浴びてキラキラ。木造校舎が金閣寺になった翌朝、彼らの憑き物は果たして落ちたのか。それとも、また何かを背負ってしまったのか。

個人的には、寝そべっている三浦友和が、立ち上がろうとした恋人の足をひっかけて倒し、2人して横になって痴話げんか?をする一連のシーンが、もうどうしようかと思ったくらい、ものすごくドキドキした。近くの机の上には、火がかかっているナベがあるしさ。

それはそうと、「犬神家の一族」を思わせるあのシーンは、わざと?笑うシーンではないのに、笑ってしまった。あとナゾなのは、佐藤浩市の友情出演。一体どこに出ていたのか、全然わかりましぇん。

大の大人になってから見た映画だったが、それでも心に残る忘れがたい名作。タイトルのセンスがいい。

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プロフィール

夏りょうこ

Author:夏りょうこ
趣味は、落語と独創的な住まいのウォッチング。これから趣味にしたいのは、カギの収集。
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